介護施設が直面する人手不足の現状と背景
まずは介護業界における人手不足の状況とその背景について詳しく見ていきます。現場のいまを正確に理解することが、効果的な対策を講じるための第一歩となるでしょう。
データで見る介護職の人手不足
厚生労働省が発表する職業安定業務統計の「一般職業紹介状況」によると、令和7年4月における介護サービスの有効求人倍率は3.65倍でした。これは全職業の有効求人倍率(1.26倍)を大きく上回っており、いかに介護人材の確保が困難であるかがわかります。
こうした状況は都市部や地方部にかかわらず起こっており、高齢者人口の増加に伴って介護ニーズは高まる一方なので、今後も人手不足はより深刻さを増すことが予想されます。
人手不足が加速する背景
介護職の担い手不足には、業界ならではの課題が関係しています。まず第一に、人の命を預かり、肉体的にも精神的にも負担が大きい業務であることが挙げられます。
利用者の移乗や入浴の介助といった肉体面で負荷がかかることはもちろん、夜勤を含む不規則な勤務体系になるケースもあり、生活リズムがバラつくことによる身体的な負担もあります。
さらに、認知症の方への対応は時に罵声に近い言葉を浴びせられることがあるなど精神的なタフさも求められます。
それに対して、雇用形態や経験年数、役職によっても異なりますが、賃金水準が高いとは言えない点も大きな課題です。厚生労働省では処遇改善に向けた取り組みを進めていますが、人手不足を解決するには至っていません。
参考:「介護職員の処遇改善」
こうした背景から介護の現場では、人手不足による問題が連鎖的に発生しています。場合によっては施設の維持や経営に関わる深刻な事態に発展するため、問題を把握し、早めに対策を講じる必要があります。
人手不足が介護現場で引き起こす具体的な問題

人手不足は、介護サービスの根幹を揺るがすさまざまな問題を引き起こします。これらの問題は単独で存在するわけではなく、相互に連関し合い負のスパイラルを生み出す可能性も含んでいます。以下は想定される代表的な問題例です。
職員一人あたりの負担増加
担当する利用者や業務が増えることはもちろん、残業によってプライベートな時間や睡眠が削られることによる心理的な負担も大きくなります。休暇取得などが困難になるケースもあり、職員は心身ともに疲弊してしまうでしょう。
サービスの質や満足度の低下
施設運営に十分な人員が配置できない場合、利用者一人ひとりに寄り添ったケアは困難です。食事や入浴の介助がおろそかになったり、レクリエーションの実施回数が減ったりすることで、利用者の生活の質が低下してしまうことにもつながります。
事故・ヒヤリハットのリスク上昇
利用者の状態を細かく把握できないまま介助を行うことで、転倒や誤嚥など事故のリスクが高まります。また、顕在化しにくいヒヤリハット事例の共有も行われにくく、事故防止のための対策が遅れる可能性も否定できません。

職員の休職・離職
慢性的な人手不足は、いまいる職員への過重な負担となり、時には心身の健康を損なう原因ともなります。その結果、休職や離職を招き、人が足りずサポートができない状況が新しい人材の定着を難しくするという悪循環につながります。
採用・教育コストの膨張
新しい人材が定着しないことで採用活動の頻度は上がり、広告掲載費や人材紹介料などのコストがかさみます。また、経験が浅い人材を採用した場合、教育にかかる時間や労力も無視できません。
施設の経営悪化リスク
サービスの質が低下することによる利用者数の減少は免れず、コストも増加することで施設の経営が悪化していきます。その状況がさらなる人員削減やサービスの内容の劣化につながり、負のループから抜け出せなくなってしまうでしょう。このように、介護現場における人手不足は多岐にわたる問題を連鎖して引き起こします。相互に悪影響を及ぼし合いながら、最終的には施設の存続に関わる事態を招くのです。この状況を打開するには、経営層が人手不足の問題にいち早く真摯に向き合い、具体的な改善策を実行することが不可欠です。職員一人ひとりの声に耳を傾け、働きがいのある職場と安心して働ける環境を整備することで、人材の定着と確保を目指しましょう。
介護施設の人手不足に対する具体的な対応策
ここでは、職員の定着率向上と新規人材の確保、業務効率化の3つの方向性で具体的な対応策をご紹介します。これらを組み合わせて総合的に実施することで、人手不足の解消とサービスの質の向上が期待できます。
職員の労働環境・待遇改善による定着促進
いま働いている職員の定着率向上は、人手不足の解消に向けた最も重要な取り組みの一つです。「この施設で長く働きたい」と思えるような職場、心身ともに健康で安心して働き続けられる環境を整備することが求められます。
給与を上げることは理想的な対策の一つですが、一足飛びには難しい状況もあります。しかし、待遇改善の方法は給与アップだけに限りません。具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。

労働時間の適正化と柔軟な働き方の導入
大幅な残業が常態化してしまっているような場合には、根本的な原因を解決するためのデジタルツールの導入が効果的です。また、家庭の状況に合わせて働きやすい柔軟な勤務形態を取り入れることも多様な人材が定着するためには必要でしょう。
・業務の効率化
利用者に向き合うこと以外に発生する業務の負担を抑えるためのツール導入や人員配置の見直しが、慢性的な残業の削減につながります。
・制度と意識の改革
連休取得の推奨など、プライベートとの両立を支援する仕組みは大切です。管理職が率先して定時退社を促すなどの意識改革も同時に行いましょう。
・多様な雇用形態
フルタイムの正職員だけでなく、短時間や週休を増やした正社員、パートタイム、登録ヘルパーなどさまざまな働き方を選択できるようにすることで、幅広い人材の確保・定着が期待できます。
快適な職場環境の整備
常に人の命と向き合う職場だからこそ、職員が安心して働けることや気を落ち着けられることへの配慮は欠かせません。設備や人間関係も働くモチベーションに大きな影響を与えます。
・休憩スペースの充実
ゆったりと休憩できるスペースの確保、仮眠施設の設置など、職員がリフレッシュできる環境を整えることも有効的です。
・設備の改善
トイレや更衣室の清潔さ、スタッフルームの設備(冷蔵庫、電子レンジなど)の充実を図ることで、働くこと以外での精神的なストレスを軽減できます。
・人間関係の円滑化
定期的な面談や意見交換の機会を設け、職員間のコミュニケーションを促進するのもよいでしょう。ハラスメント対策や相談窓口の設置など、心理的安全性の高い職場環境づくりも大切です。
福利厚生の充実
心身ともに大きな負荷がかかる仕事だからこそ、プライベートの充実は重要なサポートになります。しっかり休み、精神的にも肉体的にも万全な状態で仕事に望めるよう福利厚生を整えることも検討してみましょう。
・休暇制度の改善
有給休暇の取得促進はもちろん、リフレッシュ休暇、慶弔休暇、子の看護休暇など、多様なニーズに対応できる休暇制度を整備しましょう。
・健康管理支援
ストレスチェックの実施やメンタルヘルス相談窓口の設置、インフルエンザ予防接種費用の補助などは、職員の健康維持・増進をサポートできます。
・身の回りの補助
職員食堂の設置や食事補助、制服の支給・クリーニング補助、資格取得支援制度、退職金制度の見直しなど職員の働きやすさやモチベーション向上につながる内容を導入するのもよいでしょう。

これらの対策は、単独ではなく複合的に実施することで相乗効果が期待できます。重要なのは、職員の声に耳を傾け、現場の実情に即した形で改善を進めていくことです。待遇改善や労働環境の整備は、職員のエンゲージメントを高め、結果としてサービスの質向上や施設の安定経営に繋がる投資と捉えるべきです。
多様な新規人材の確保
人手不足を解消し、持続可能な介護サービスを提供するためには、新たな人材の確保も不可欠です。ここでは、外国人材やシニア層をはじめとする多様な人材を迎え入れるための具体的な方法と、その際に考慮すべき点について解説していきます。
外国人材の受け入れ
介護分野における深刻な人手不足に対応するため、外国人材の受け入れは有効な選択肢となっています。後押しする制度も多数用意されており、それらを活用することで海外から意欲のある人材を介護現場に迎え入れることができます。
主な受け入れ制度として、以下の3つがあります。
・特定技能制度
一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる制度で、介護分野では特に多くの人材が活躍しています。日本語能力や介護技能に関する試験がありますが、比較的スムーズな受け入れが期待できます。
・EPA(経済連携協定)
日本と協定を結んだ国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)から介護福祉士資格取得を目指す候補者を受け入れる制度です。長期的なキャリア形成を支援する側面があります。
・技能実習制度
開発途上国への技能移転を目的とした制度ですが、介護分野も対象となっており、実践的な技能習得を目指す人材を受け入れることができます。

外国人材を受け入れることには、文化や宗教上の違いによるコミュニケーションの課題、生活習慣への配慮、ビザ申請などの手続きなど乗り越えるべき課題も多く存在します。受け入れ後にも、日本語教育や生活サポート体制の整備など、施設全体でサポート体制を構築し、行政書士などの専門家の協力を得ることも検討しましょう。
復職人材やシニア層の登用
国内においても、さまざまな形で介護の現場に貢献しうる潜在的な人材がいます。家庭の事情などで職を離れざるを得なかった復職人材や定年後に新たな職への挑戦を希望するシニア層なども候補になります。そうした人材を受け入れやすい環境整備を進めることで差別化できます。
・復職人材の確保
一度、育児や介護、転職などを理由に職を離れた人材は大きな戦力になります。身内の介護経験がある場合、基本的な知識やスキルを有しており、適切なサポートがあれば比較的早く現場に慣れることも期待できます。
・シニア層の活用
定年退職後のシニア層は、これまでの人生経験や豊富な知識、そして責任感を兼ね備えた貴重な働き手です。レクリエーションへの参加や職員のサポートなど幅広い場面で力を発揮してくれます。
短時間勤務や特定の業務に特化した働き方など、柔軟な勤務体系を提示することで多様な人材に活躍の機会が提供できます。また、健康状態や体力に配慮した業務内容やシフト調整も重要です。「ブランクへの不安」「体力的な心配」「以前の職場のネガティブなイメージ」といったハードルを取り除くために、柔軟な働き方の導入、相談しやすい環境づくりなどが効果的です。過去の退職者への情報提供や、ハローワークの復職支援プログラムとの連携も有効な手段となります。
テクノロジーやサービス導入による効率化と負担軽減
人手不足の解消と職員の負担軽減には、最新ツールの積極的な導入も有効な一手です。上手く活用することで、定型業務の効率化、身体的負担の軽減、ケアの質の向上、そして利用者と向き合う時間の創出が可能になります。ここでは、介護現場で導入が進んでいる具体的なテクノロジーとその効果を詳しく解説します。
介護記録の電子化
紙で取っていることが多い介護記録を、タブレットやスマートフォンなどで入力し、管理できるシステムが開発されています。体温や血圧などのバイタルサイン、食事や排泄の記録、日々の様子などをリアルタイムで残すことができます。音声入力機能を備えたシステムや、ケアプランと連動するシステムもあるので、発生している業務を整理してより効果が期待できるものを選びましょう。
移乗ロボット支援
ベッドから車椅子、車椅子からトイレなど日常のさまざまな場面で発生する移乗を補助するロボット機器も増えています。利用者を抱え上げたり支えたりする際に装着してアシストしてくれるスーツタイプや据え置き型のリフトやスリングシートなど、多様な形態があります。
見守り体制の構築
利用者の様子を広く把握できるカメラや温湿度をモニタリングするツールをはじめ、ベッドからの離床や歩行時の転倒など異常を検知するセンサーなどさまざまな用途に応えるラインナップが存在します。職員のスマートフォンに通知が届くものもあり、負担の大幅な軽減につながる一方、プライバシーに配慮した運用が必要になります。
ローコストで導入できる「KaigoDX」の見守りカメラから始めてみませんか?
人手不足への対応策をさまざまご紹介してきましたが、制度の変更や新規人材の採用、大幅な設備投資などは早急な着手が難しいでしょう。加えて、その場しのぎに導入を進めても現場で機能せず、コストがかさむ結果も招きかねません。職員の声にも耳を傾けながら、ローコストで負担軽減が期待できることから進めてみるのが得策です。「KaigoDX」が提供する見守りカメラは月額1,200円から導入することができるため、取り組みの一歩目として最適です。人手が足りない状況に対し、物理的に把握できる範囲が広がることはもちろん、施設内で発生した事象の記録も残せるので、有事の際に職員も利用者も守ることができます。
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人手不足の解消には継続的な取り組みを
人手不足は、一時的な対策では解決できない根深い問題です。介護ニーズの増加や労働人口の減少など、今後も状況は変化し続けるため、現状に合わせた対策を継続的に見直し、改善していく必要があります。定期的な職員との意見交換や他施設との情報共有などを通じて、常に最適な解決策を模索し続ける姿勢が重要です。新しいテクノロジーなども取り入れながら、長期的な目線で取り組んでいきましょう。